スマート駄目リーマンの忘備録

旅行記、キャリア論、世相分析など思ったことを書き連ねます

真昼鈍行(熱風ベトナム編 2009) 2

 

真昼鈍行とは外回りの営業に疲れたサラリーマンが帰社するまでの時間稼ぎをするためにわざと鈍行に乗る行為である。
そのようなサラリーマンは日本の競争社会と雇用環境の理不尽さにほとほと疲れ果てている。そうして、やがて長期の旅に出る。その中の三分の一は社会復帰できず。旅先で沈没する。

8/9 朝の5時半くらいに自然と目が覚めた。5時過ぎには外はスクーターのけたたましい喧騒に包まれる。地球の歩き方にパラパラっと目を通し、午後3時位までハノイを周り、そこからバスでハロン湾に向かうことに決めた。
しばらくベッドに横になり6時過ぎにシャワーを浴びて、日本から持参したカシューナッツを食べた。そして7時過ぎにはチェックアウトを済ませた。

昨日の夜に到着し、町の構造が把握できなかったので、駅までタクシーを使った。
昨日の教訓からタクシーメーターがONになっているかしつこくドライバーに尋ねる。
俺のしつこい問いかけをドライバーは軽くいなす。分かったよ。お前さんよ。

スクーターの波の中を縫って、颯爽とタクシーは駆け抜ける。10分くらいだったろうか。駅前に到着。
料金は43,000ベトナムドン。まだ当時はベトナムの金銭レートに感覚が追いつかず高いのか安いのか良く分からなかった。
(ちなみに下3桁を除いて×5をしたくらいで日本円に換算できます。だから43×5でおおよそ220円位。)
100,00ベトナムドン札をタクシーのドライバーに手渡す。おつりが無いから仲間に借りてくるとのこと。3分後、汚い泥まみれの紙幣を何枚か手渡された。桁が多すぎて正確な金額か分からねー。とりあえず、50,000ドンはもらえているようだったのでよしとする。あまり金のことを細かく考えすぎると旅がつまらなくなりそうであ ったので、金のことはあまり考えないことにした。

駅から町の中心にある湖を目指した。駅前の大通りは一方通行ではあるが、信号がなく、スクーターの波が常に押し寄せてきて渡るのに一苦労。しかも渡るタイミングを見計らっている最中に客引きがしつこく声をかける。
「日本人ですか?私が案内しましょうか?。」
「ヘイ、バイク、バイク。」
彼らに気を取られているうちに千載一遇の渡るチャンスを逃してしまった。

むかついたので腹いせに客引きに対して強くNOと言ってしまった。客引きは意外とあっさり引き下がった。今回のベトナムでは客引きに多く遭遇したが、彼らは皆淡白だった。
一度断ればしつこくは追ってこない。
もう一度機会を伺い、なんとか渡ることができた。たかが1本の道を渡るのに2~3分。先が思いやられる。それにしても暑いなー。暑いじゃなくて熱い。陽光が肌に鋭く突き刺さる。痛いくらいだ。まだ8時前なのに。
それにしても排気ガスがすごい。空気が汚れすぎだろ。マスクをしている人たちをかなり見かける。
横断歩道や信号はあって無いようなもので、道を渡る際は左右前後を慎重に確認する。そしてダッシュで駆け抜ける。(旅の終盤ではコツを掴みさすがにこんなことはしなくなったが。)
30分くらいえっちらおっちら歩き、何とか湖に到着。湖では地元の人たちが体操をしたり、ジョギングをしたりしていた。
とりあえず、湖の中の島にある寺みたいなところを訪れる。が、特に印象に残らず。
今となってはあまり思い出せない。
とりあえず、寺の石に腰掛けてこれからどこを周遊しようか考える。
寺から少し足を伸ばすと小説や映画でよく舞台になったハノイ旧市街地があるので、そこに行くことにする。
しばらく歩くとごちゃごちゃした碁盤の目の職人街のような場所に到着。ここがハノイ旧市街らしい。金物屋、水道のバルブ店、アオザイ専門店、フォーのお店、あらゆる店が狭い路地を挟んで密集している。その狭い路地をおびただしい数のスクーターが駆け抜ける。
少しでも店に気を取られているとたちまち轢かれそうになる。
歩けども、歩けども碁盤の目の道、様々な同じようなお店が連なり続ける。しまいに迷子になり、スーパーの姉さんに道を尋ねる始末。すごい人の熱気。経済活動の集約地という印象を受けた。とにかくこの狭い路地の密集地帯に様々な経済活動が渦巻いている。
炎天下、複雑な路地、おびただしいスクーター。頭も体もクタクタだ。

とりあえず、この喧騒から逃れよう。そんなわけでハノイタワーというビルディングを目指す。このビルには外資系の企業のオフィスと小さなショッピングモールが存在していた。
テナントの企業の一覧にザッと目を通すとMITHUBISHIの文字が。やっぱり商社は進出しているのね。そのビルにあるカフェでチャーハンを食す。高い割に味は微妙。こんなちゃんとしたカフェでこんな味なら、この先どうしよう?!(これは杞憂に過ぎなかった。路地の屋台は非常にうまかったのだ。)
今回の旅で最もまずかったといっても過言ではない。しかしこれからハロン湾を目指し、長距離バス移動があるのでお腹は壊せないと思い、無難なチョイスをしてしまった。
振り返ると今回の旅の前半では食べ物、周遊するところをだいぶセーブした。発展途上国に来たという緊張感が自然とそうさせたのだと思う。
食事を終えるとハノイタワーのすぐ隣の政治犯収容所の博物館にはいる。収容所の再現がむごかった。フランス統治時代に民主化を訴えたベトナム人達が捉えられた際の収容状況が写真や人形のようなもので再現されていた。
我々がミーハーな感覚で抱くフランス人に対するイメージをおおいに覆す内容だった。
フランスというとお洒落といったイメージが少なくとも自分は先行するが、植民地支配、奴隷貿易など結構ひどいことも相当行っているわけで、そういった二面性の暗の部分を垣間見た。
すぐ隣にあるおしゃれなハノイタワーと残酷なまでのコントラスト。

その後はベトナム歴史博物館に入る。二階の展示物には目を惹かれた。仏教関連の展示物と同じくらいのウェイトでヒンズー関連の展示物も。
ちょうどベトナムはインドと中国の海路の中継地点なので様々な文化の影響をうけているのだね。
博物館の建物自体もフランス風と南国風の微妙な融合がなされ、そこから独自のものが昇華されている印象を受けた。なかなかおしゃれ。展示物と同じくらい博物館の建物自体の見ごたえも十分だった。
その後劇場を訪れ、軽く写真撮影。こちらも博物館と同様におしゃれ。洋風文化の取り入れ方は日本よりもベトナムの方がうまいのではないか?
南国の植物と建物の色合いが見事にマッチ。センスの良さを感じた。
その劇場の庭にあるカフェでピーチティーを飲んだ。

ベトナムのカフェでは冷たいお茶を頼むと熱々のティーポッド一式と氷が満杯になったグラスが給支される。
氷が満杯のグラスに熱いお茶を少しずつ注いで飲む。
炎天下で歩き疲れた体に冷たいピーチティーが染み渡る。
そこからの劇場の眺めも素晴らしい。
その後タクシーを捕まえてハロン湾行のバスが出ているターミナルへ。
窓口で切符を買い、バスに乗り込む。
八割くらいバスに乗客が埋まっているが、なかなかバスは発車しない。
ターミナルの中で歩いている人にバスガイドが声をかけて少しでも多くの人を乗せようとする。
九割方席が埋まったところでようやく発車。
しかし300mほど進み、停車するはずのないバス停でまたしてもバスを待つ人に声をかける。
途中まででもよいから、なんとか人を乗せようとする。この時点でもう40分経過。先が思いやられる。

数人を乗せたところで発車。
バスが走っていてもガイドは道行く人に引っ切りなしに声をかける。そのたびにバスは速度を緩める。
さらに30分程経過しただろうか、植木を抱えてるおばちゃんの横でバスは停車。
まさか!そのまさかで、ガイドはそのおばちゃんが抱えている大きな植木をバスに積み込み始めた。
バスの中で植木の土埃が舞いちる。夢であってくれ。
バスと言ってもマイクロバス。スペースがたくさんあるわけじゃない。
もうギュウギュウ詰め。
それを見かねた30過ぎの女性がガイドに切れだす。
一時間くらい経過しただろうか。
静かに耐えるしかない。

その後は同じようなことの繰り返し、道行く人にガイドが声をかけてはバスは速度を緩める。
バスは一路ハロン湾のある町Bay Chayへ。4時間くらい経過しただろうか。かなた前方に石灰岩風の岩山のようなものが姿を現した。
もう少しで目的地のようだ。精神的にも肉体的にもへとへとだ。
街の中心部で下ろしてくれると思いきや。
町外れのよく分からないところで無理やり下車させられる。
おいおいこっからどこに行けばよいのだ?
とりあえず海岸線を目指す。途中スクーターに乗った男にガンをつけられ、俺の後ろをなにやらまくし立てながらゆっくりとしたスピードでしつこく後ろにまとわり付いてくる。
ボコられることを半分覚悟。とりあえず無視していたら、追ってこなくなった。
なんとか島へかかる橋の手前までたどり着く。海岸線はすぐそこだ。
遠めにホテル街らしきものを発見。そこをひたすら目指す。
なんとかホテル街にたどりつく、バイクに乗った客引きがしつこい。精神的に疲れ、とりあえず目についたホテルに飛び込む。
一泊40ドルだそうで。ちょっと高めだが。面倒なのでそこにした。おなかがへっていたので、ホテルのバーカウンターでカレーを食べる。とにかく喉が渇いた。ペットボトルの水を二本注文。一本目はぐび飲みした。
ホテルのボーイは非常に親切で、俺に四台の扇風機の風を向けてくれる。
人の優しさに触れた。すごく気持ちがほっとした。
カレーは微妙。ルーはまずくなかったが、米とのミスマッチ間が否めない。日本の米のようなもちもち感が足らない。半分くらい残してしまった。
ホテルの受付でハロン湾のクルーズツアーの申し込みをして、部屋に戻る。

シャワーを浴びて早めの就寝。

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