災害発生時にも無理して出社する日本人
最近、太平洋沿岸沿いを中心に地震が頻発しています。日本人の精神的な特性から、今後も災害発生時にも無理して出社する人が多くいると思われます。
しかしながら、こうしたことは従業員本人及び会社にとって、リスクが非常に大きいものです。
今回はこうしたリスクが非常に大きく、リターンは少ないのに何故日本人は災害でも無理して出社するのか考察しようと思います。
本当に出勤するべき人達のみが出勤すべき
ここで、一点注意ですが、こうした災害時は医療機関、インフラなどのエッセンシャルワーカーのみが通勤すべきであり、それ以外の方はなるべく出勤を控えて、そうした方に道や席を譲ってあげるのが望ましい姿です。
それでも何故、それ以外の人達も出勤してしまうのでしょうか?
残酷な真実
社員の立場
災害発生時では公共交通機関に遅れが出ます。また、減便になり、激混みです。始業時間を大幅に超過し、昼前にやっと会社に到着します。
さらに公共交通機関の社内が混んでいると新型コロナウィルスの感染リスクが大幅に上昇しますし、通勤中に災害に見舞われる可能性も存在します。
このように様々なリスクを冒して疲弊した状態で出社しても、仕事に集中できるのでしょうか?
結局、その日は会社には出勤した意欲を示しただけで、会社に対して大した貢献は出来ません。
私の身の回りの体験だと、台風の日に無理して出社したせいで、疲弊して次の日に休んでしまう社員が一定数いました。
それならば、最初から台風の日に休んで、収まった次の日に出社した方が良いじゃんと誰もが思うでしょう。
会社の立場
出勤途中の社員が災害で、怪我をすれば労災になり、会社は社員に対して補償する必要があります。
無理して出社させても、大したパフォーマンスがあげられないのに、リスクだけを背負い込み、全く利点がありません。
日本人のメンタリティ
災害時に無理して出社する日本人のメンタリティーについては随所で語られていますが、ここの部分の根っこは相当深い気がします。
農耕民族
日本人は田畑を中心として村を形成し、長年、集落の仲間と助け合いながら生きてきた農耕民族の精神性が根付いています。
激しい雨が降って、田畑がぐちゃぐちゃになれば、村人の食料が欠乏し、生存の危機に瀕します。
その為、激しい雨が降ったら、田畑に水が溜まらないように村人一同で水吐きを行う必要があります。そんな時に、危ねーからと言って、水吐きを手伝わない奴は、一発で村八分です。よって、村八分になってしまうことの潜在的な恐怖感が日本人には未だ根付いているのかもしれません。
メンバーシップ雇用
現代は、多くの日本人が農耕を生業にしなくなりましたが、その代わりに会社が村の役割を担うようになりました。
専門性を考慮せずに、総合職という枠で、会社の為に頑張ってくれる社員を緩く、広く採用して、会社の中でだけ生きて行けるように飼いならします。
終身雇用が機能している間は、このような飼いならしは社員にとってもメリットがありました。
今は終身雇用が絶対では無くなりましたが、会社という村を出て行く自信がある会社員は少ないので、会社から村八分にされまいと多くの会社員は考えます。
(今の20~30代の若者や高スキル社員を除き、新卒から会社の中でしか生きていけないように飼いならされてきてしまったので、今さらどうしようもなりません。)
災害時の出社をリトマス試験紙として利用する経営陣
災害時に経営陣が出社している中、部下もそれに付いてきてくれるか否かで、部下の意欲や忠誠心を計ろうとする経営陣が未だに多いです。
私は、台風の日に会社を休んだら、当時の上司から「お前より遠くから通勤しているあいつは会社に来てるぞ」とメールが来て、ゾッとした気持ちになりました。
危険を冒してでも、会社に来ることを美徳とする価値観を私はついぞ理解出来なかったのでした。
社員の意欲をこのような危険を冒して会社に来たかどうかで評価するのではなく、業務に関連する資格を意欲的に取得しているか、業務効率化のための工夫を日々実践しているかによって計るべきです。
全く、終身雇用を保証出来なくなったくせに、社員に忠誠心だけは未だに要求する経営陣には困ったものです。
パフォーマンスこそが唯一無二の存在
会社は終身雇用を保証できなくなった今、社員が災害時に無理して出社することで、会社への忠誠心をアピールする時代は終わりました。
これからは会社へのパフォーマンスの高さで、勝負する時代になってきたと思います。台風に無理して出社して、次の日に休む社員よりも、台風の日は体力を温存し、台風が過ぎ去った次の日に集中して働く社員の方が合理的です。
このように会社に良いパフォーマンスを与えてくれる社員が、これからの時代に求められる社員です。
まとめ
メンバーシップ型の終身雇用の時代が終わりつつあることを経営層も労働者もいい加減受け入れて、ある程度ドライな関係性になったほうが、お互いに幸福だと思います。
そして、意欲は仕事上のパフォーマンスや社員の自己啓発(業務に関連する資格の取得)によって計るべきです。