スマート駄目リーマンの忘備録

旅行記、キャリア論、世相分析など思ったことを書き連ねます

今の株高には浮足立ってはいられない

今回の野村の損失は看過できない。影響は限定的というアナリストがいるが、野村とクレディスイス単体ではそうかもしれないが、実はもっと根が深い気がする。

去年の予想外の株高で、売りポジションを持っていたファンドや大手投資銀行もあっただろう。個人の買い方としてみれば、株が右肩上がりで上昇してくれれば、嬉しいことこの上ない。しかし裏を返すとそれによって売りポジションの損失を被ったファンドや個人がいるわけだ。そうした機関が損失によって市場から退場すると空売りが減るので、踏み上げが小さくなり株価が上がりにくくなる。

さらにもっとまずいことに、ファンドが大損失を被り、債務不履行に陥ることによってファンドに金を貸し付けた投資銀行も道ずれにされてしまう恐れがある。そうなると一斉に市場から現金が引き上げられることにならないだろうか。金融機関の経営悪化は市場に負のインパクトを与えやすい。

よってNYダウが高値更新と浮足立っていることは出来ない。高値更新を続けることで、売りポジションを多めにしていたファンドが破綻し、金を貸していた機関も連鎖的に破綻。皮肉なことに高値更新が大暴落の引き金になりかねない恐れが想定される。今は買い方と売り方の健全なバランス関係が崩れている。そのうちに臨界点に達してしまうことを私は非常に危惧している。現在でもアメリカの個人の信用買い残高はリーマンを超えており、一度暴落にはまると追証が払えずに売りが売りを呼ぶ展開になってしまうだろう。右肩上がりの株高で買いポジションをレバレッジかけて多めに持っていたファンドも道ずれにされたら、本当にえらいことになる。アメリカの金融当局もこんなことは当然認識済みであり、だからこそお茶を濁した見解しか発表できないのではないだろう。

またコロナを仮に克服して景気回復が確実になると今度は金融引き締めに入る。そうなると高止まりしていた株価が暴落し、景気回復を冷やし、再度景気悪化に突入するかもしれない。まさに今は袋小路状態なのだと思う。昨年のコロナショック時にマネーの供給を増やしすぎたが故に出口戦略がふさがれてしまった状態だ。しかも株高をこれ以上するとインフレを容認することになる。そうなった時に給与もそれに従って上昇するだろうか?最悪不況&インフレのスタグフレーションに陥らないだろうか?

 今回の事象は歯が痛むときにさっさと歯医者に行かずに痛み止めでごまかし続け、最後は歯を抜くしかなくない段階まで来てしまうようなものだ。確かに治療には痛みを伴う。しかし、治療から逃げれば、その時は痛みを伴わないが、将来的にさらにもっと大きな痛みを伴う治療になる。