スマート駄目リーマンの忘備録

旅行記、キャリア論、世相分析など思ったことを書き連ねます

ロシアワールドカップ観戦記(シベリア鉄道前編)

 私が乗り込むのは四人の向い合わせのコンパートメント寝台の上段である。向かいの寝台と私のすぐ下の寝台には既にモスクワからの先客がいた。向かいはモスクワでの兵役を終えて、帰郷する男性とそのパートナー。下の寝台には普段はバイカル湖の沿岸警備をやっていて、モスクワでのロシア対エジプト戦の試合を観戦して、帰る軍人。彼らは大変フレンドリーで、長旅のお供として、大変心強い存在であった。

 とりあえず、私は日本対セネガルの試合観戦の興奮も冷め止まない中で、体を休めるために眠りについた。ドローで良かった。これで決勝トーナメントへの望みが繋がった。八時間ほど睡眠をとっただろうか。むくっと起きて、寝台の上でエカテリンブルク駅で購入したパンをほおばった。油田で有名なチュメニなどに停車し、列車は順調に疾走する。

 あくる日はオムスク駅で長時間の停車があったので、ホームに降りて食料を買い込んだ。若干肌寒い中、温かいボルシチパンがありがたかった。

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緑色の駅舎が印象的だったオムスク駅

 お昼はボルシチパンと列車に備え付きの給湯器で作ったインスタントラーメンを食した。それから、車窓をずっと眺めながら本を読みふけった。読んだ本は「失敗の本質」という太平洋戦争での日本軍の敗因を分析した本だ。

wifiがほとんど繋がらなかったので、風景に飽きた時は本を読むしかなかったのだ。本の内容は固いものだったが、日常生活ではインターネットなどの誘惑が多く、なかなか読み進めることが難しい。こういう環境だからこそ、読了出来たのだと思う。それにしても太平洋戦争で露呈した日本人の欠点は(論理を無視した根性主義、内輪での派閥争いで本来の大目的を見失う)、未だに日本の企業社会のはびこっており、これが1990年代以降の企業競争力低下を招いたことを改めて痛感した。未だ教訓を生かせず、袋小路でもだえる日本に非常に幻滅したのであった。

 緯度の高さと、東周りに時間が進む方向に列車は進んでいることもあってか、なかなか日が沈まない。体内時計の感覚が狂いそうだ。本を読んで、飽きたら横になることを繰り返していたら、いつの間にか夕食の時間になった。一緒のコンパートメントに乗り合わせていた彼らが、下の寝台で手招きをして一緒にご飯を食べようと誘ってくれた。

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ビール片手に楽しい晩餐

 ビールを片手に、サラミとパンで乾杯。身の上話やモスクワでの思い出話に花が咲いた。モスクワでの兵役を終えた彼は最後に大砲を発射するセレモニーの動画を見せてくれた。

 お腹も一杯で、ほろ酔い気分。景色にも読書にも飽きていたが、こうした出会いが、単調になりがちに鉄道旅に彩を添えてくれた。声をかけてくれてありがとう。日付や時間の感覚が次第に麻痺してきたが、ビールが回ったので、就寝した。

 次の日も単調な風景が続いていたが、やがて大都市に列車が差し掛かった。ロシアで兵役を終えた彼が彼女と一緒に身支度を始めた。どうやらかれはここが故郷のようだ。昨日にビール片手に語らった思い出がよみがえってくる。

 やがて列車はノボシビルスク駅のホームに滑り込む。ホームに降りて一緒に記念撮影をした。

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お幸せに!

 「Good luck !」

  「You too」

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