スマート駄目リーマンの忘備録

旅行記、キャリア論、世相分析など思ったことを書き連ねます

長い春休み(東日本大震災の記憶)関東脱出編

目が覚めて、ネットニュースを眺める。

宮城県福島県沿岸部の行方不明者の捜索が思うように進まないようだ。

そして福島原発の状況も思わしくないようだ。

ネットで海外ニュースも覗くと、日本国内の報道以上に福島原発の状況か悪いようだ。

東京の在外公館の職員とその家族にヨウ素が配布され、関西方面へ随時避難を開始しているらしい。

日本人と日本に駐在する外国人の情報間に事態の深刻度の剥離があるように感じ取れた。

昨夜のNHKでの東大教授による原発の状況解説もいまいち的を得ていない印象であった。

関東に留まるべきか?それとも関西以西に避難するべきか?

思案の結果、関西以西に避難すると決断した。

親は仕事で外出していたので、祖母の家に出向き、自分で熟慮の結果関西以西に避難すると伝えた。

新幹線が動いている東京駅までは自転車で行くことになる。(電力不足で首都圏の電車はほとんど運休)

午前八時過ぎに自転車にまたがり、国道四号線から一路東京駅を目指す。

ここからだと30km程度。高校時代は50kmの強歩大会を三年連続で完走したから行けるだろう。

国道四号線を南へとひた走る。スーツを着た通勤者達に遭遇し、そのうちの一人に話しかけると電車は不通だが自転車で東京付近の職場を目指すとのこと。少し心強くなった。とにかく3〜4時間一心不乱に自転車をこぎ続け、何とか上野駅付近までたどり着いた。

ちょうどその時だった。人々が一斉に建物から屋外に走り出し、パニックの様相を示していた。

その内の一人に何が起きたのか尋ねると、福島第一原発の三号機が水素爆発したらしい。私も動揺し、このままでは新幹線が止まるのも時間の問題なのではないかと心配になった。タクシーを捕まえて、自転車を放置して東京駅まで行くことにした。

 タクシーはすんなりとつかまり、東京駅へ。タクシーの運ちゃんに原発事故の不安などを吐露した。理解がある運ちゃんだった。君は若い。自由席の立ち席でもいいから、とにかく新幹線に乗り込んで生き残るんだぞと力強い言葉をかけてくれた。料金は多めに払って別れを告げた。急いで新幹線の券売機に向かい、とりあえず大阪までの切符を購入する。新幹線は脱出する人でごった返しているかと思ったら、そこまで混んでいなかった。自由席の窓際に腰掛ける。隣に座ったおばちゃんに声をかけるとやはり不安で関西の親戚にしばらく身を寄せるとのことだった。新幹線の発車が待ち遠しい。発車までたった三分であったが。この三分間が一時間のように思えた。新幹線は無事定刻に発車し、品川のビル群を背に川崎の工業地帯を経て新横浜に向かう。新横浜停車中もまだ心がそわそわとして落ち着かなかった。新横浜を発射し、小田原を過ぎ熱海に差し掛かるくらいになって、ようやく気持ちが落ち着いた。冷静に自由席の社内を見渡すと、外国人の乗客の多さが目立った。そして、名古屋までノンストップ。社内ニュースのテロップに目を向けると福島原発二号機で、冷却水喪失という文字が躍った。宮城にいる友人たちに偏西風と逆の方向の日本海側に避難するよう伝えた。まだ携帯の電波はつながっていないだろう。気休めなのは分かっている。でもそうせずにはいられなかった。

京都、新大阪と新幹線は順調に快走する。新大阪で降りる筈だったが、原発の冷却水喪失、一号機、三号機の爆発が気がかりで、もっと遠くに避難した方が良いだろうと思い、博多まで行くことにした。東京を12時前に出発し、博多には夕方に到着した。改札で新大阪と博多間の料金の精算を済ませた。

 近くのビジネスホテルに一泊することにした。今後最悪の事態になった場合国外脱出するかもしれないことを視野に入れ、空席などの調査を兼ね、福岡空港に向かった。福岡空港には信じられないほどの数の外国人が殺到していた。そこに集っていたドイツ人の一団に声をかけた。

私「君たちはなぜ福岡空港にいるの?」

ドイツ人「俺たちも理由はよく分からないんだ。とりあえずドイツ大使館から西へ避難するか、日本国外へ脱出するように通達があったんだ。俺たちはレンタカーを借りて、とにかく無我夢中で高速道路で西を目指したんだ。明日、シンガポールに緊急避難する。」

やはり国外に脱出した方が良いのか?ざわつく胸の内を押さえてビジネスホテルに戻る。ビジネスホテルでテレビを付けると枝野官房長官の記者会見が放映されていた。原発事故についての影響を問われても、直ちに影響はないという回答の一点張り。日本のメディア、日本政府に対する不信感が、臨界点に達した。真実を知りたい。よし、俺もシンガポールに行って、日本を客観視しよう。明日の朝、福岡空港に行き、航空券を予約しよう。そう決意するとお腹が空いてきた。福岡の豚骨ラーメンを食べて、眠りにつく。親にはしばらく海外に行く、こまめにメールするから心配しないでくれと伝えた。会社の上司にも同様のことをメールした。長い春休みの始まりだ。