スマート駄目リーマンの忘備録

旅行記、キャリア論、世相分析など思ったことを書き連ねます

長い春休み(東日本大震災の記憶) 震災発生当日編

東日本大震災発生から10年

 今年は2021年という2011年の東日本大震災から節目の10年となります。私は当時宮城県に赴任しており、被災者という立場を瞬間的に経験しました。

2020年からのコロナ禍で、節目の10年にも関わらず東日本大震災の記憶が風化しつつあることに危機感を感じております。小市民の私の立場から東日本大震災を振り返りたいと思います。幸い私が被災した地域は沿岸部ではなかったので、津波の被害は免れましたが、当時、私が勤めていた会社の一部の社員さんとその家族は津波被害に遭遇し命を落としており、胸が痛みます。

 

発生当日

2011年3月11日

 私は当時、東北地方に事業所を有する某電子部品メーカーに設計者として勤務しておりました。

 週末の昼下がり、(14時半くらい)けだるい空気満載で私はCADで電子部品のモデリングに勤しんでいた。

 「おい、お前。なんか面白い話しろよ。」隣の先輩も昼下がりのけだるさに耐えかねて、私に軽いちょっかい。「そうっすね。寮の同じ部屋の相方が~で・・。」と寮の同室の当時のサッカーポルトガル代表のデコ似の相方をダシにして、先輩の笑いを適当に取る。

15時の休憩が待ち遠しい。休憩では自動販売機で何のジュースを買おうか思いを馳せる。 

 その時だ。ユサユサとした揺れが私たちを襲ったのだ。しかし、当時は震度3程度の地震が頻発しており、どうせその揺れもすぐ収まるだろうと高をくくっていた。私以外の人たちもそうだったと思う。ユサユサが徐々に周期を挙げていき、ある臨界点を超えて急峻な衝動と高周波が私たちを襲った。建物全体がカクテルシェーカーに入れられているように。設計室に同居していた私以外の社員もただならぬ事態を悟ったのだろう。机の下に潜り込み、体を守る。空調機が落下し、自動販売機が次々と転倒していく。何が何だか分からず、揺れが収まっても皆が動揺し、オロオロするばかり。とりあえず、私は設計室から自分の部署に戻ることにした。

 部課長が安否確認を行い、人事から周囲に転倒物がない会社のグランドに集合しろとの指示が下る。部署ごとに整列し、部課長が点呼をとる。余震が襲い、そのたびにグランドのスピーカが揺れ、皆恐怖におののく。グランドに集合すると、事業部長(人事部長?)が、今回は非常事態であり、今日は会社の仕事を中断し、家に帰り、家族の安否確認や転倒した家財の整理をするようにとの指示が下る。まだ、この時、津波被害や原発危機が迫っているなどその場にいた社員は梅雨とも思わなかっただろう。

 私は急いで会社から徒歩三分の寮に戻る。ベッドは1メートルほどずれ、本棚の本は全て落下していた。その時バンコクに駐在している大学時代の友人から国際電話がかかってきた。携帯電話のモニタには国際電話を表す地球のイラスト。見慣れないディスプレイ表示。これは国際電話を緊急にかけくるくらい。まずい事態なのか?

部屋は滅茶苦茶だが、何とか無事だと回答する。

物流が寸断されているかもしれない。スーパーかコンビニに行って、急いで食料を確保しよう。

 

買いだし失敗

 とにかく食料を買いこもう。ドラムバックを担いで、急いで近所のスーパーへ。スーパーは暗くがらんとしており。人がいる気配がない。諦めてコンビニへ。そこもスーパーと同じような印象。すでに一歩早く買占めが行われてしまったのか。途方に暮れていると、あたりは薄暗くなってくる。物資が枯渇するならば、ここから脱出するしかない。近くのタクシー会社へ向かい、ここ宮城県から日本海側の山形県に行けないか尋ねてみる。しかし、ガソリンが無く行けないの一点張り。(そんな訳あるか。絶対嘘だ)という声を飲み込み寮に戻ることにした。そのうち雪が降ってきた。

 寮の階段を上り、自分の部屋へ向かう途中に窓から外を除くと、この厳しい状況とは対極に夕焼けが美しく、神々しく輝いていた。停電により、街灯が全くないため、夕焼けが異常なほどのコントラストを放っていた。お腹が減ったが、自室には朝食べたカシューナッツとお土産のバウムクーヘンしか無い。しかし、地震でひっかきまわされた部屋ではカシューナッツは見つかったが、バウムクーヘンは見つからなかった。食料が手に入らない以上下手に動き回らず、体力を温存するしかない。布団に潜り、ラジオを付けると、何やら官邸から原子力非常事態宣言が発出されたとのこと。宮城県沿岸部の女川原発で何かあったのか?それとも福島原発か?原発がもし爆発するようなことがあった時に、このままじゃ逃げられない。言いしれない恐怖心が自分を襲ってくる。

 

正気を失う仲間たち

 寮の他の部屋では嬌声がこだましていた。恐怖心を制御できず、友人同士が集い酒盛りをし、現実逃避に向かう者達。その中には普段会社の同期内で威張り散らしている輩もいた。極限状態で人間の本質が問われるというが、正にこのことかと。自分は負けないぞ、絶対に生き抜くぞと誓った。今日は長い一日だった。精神的な疲れと空腹が雪崩のように襲ってくる。いつの間にか眠りに落ちていた。

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