あくる朝、托鉢を見るために、五時前に起床した。托鉢とは仏教の修行の一つであり、僧侶が鉢を持って市街地を練り歩き施しを受けて回ることである。五時半に町中に出るとオレンジの僧衣をまとった僧侶が列をなして、練り歩いていた。
まだ明け方の淡い空の色とオレンジの色の僧衣。そのコントラストがまばゆかく、托鉢の光景をより幻想的なものにした。
托鉢を見終わった後は市街を一望できるプーシーの丘に登った。森に囲まれた仏教都市のかつての栄華を彷彿とさせる幻想的な雰囲気を感じ取れた。丘の高台には金箔を施されたまばゆい仏像。
散歩を終えて、朝食をとった後は、ガイドを付けて船でパークウ洞窟へ向かった。船で川を下り、川沿いの洞窟の中に向かうと住民たちが運び込んだ沢山の仏像が目に飛び込んできた。その後は金箔のきらびやかな寺院をガイドに案内してもらい、正午あたりでガイドと解散した。
川岸のレストランで昼食を食べることにした。すでに川沿いのテラス席には日本人と思しき中年男性が、黙々と定食を食べていた。遠慮しながら話しかけると、気さくに応じてくれた。日本でサラリーマンをやっていたが、人間関係に疲れて、今はタクシードライバーに転身。仕事に合間に海外旅行に行っているとのことだった。海外を一人で旅する日本人は往々に日本社会特有の同調圧力などに疲弊している印象である。自分もそうした同調圧力に疲弊しているクチなので、話をしていて波長が合うし、疲れない。彼らはお互いに疲れない人間的な距離感を非常によく心得ているのだ。その中年男性は煙草をくゆらせながら、会社の年末の忘年会の強制参加とか本当に面倒くさいよねーとしみじみ語ってくれた。そのおじさんと話し込んでいるといつの間にか夕方に差し掛かっていた。明日はクアンシーの滝に行きたいので、そこへ向かうツアーを手配して宿に戻った。
ルアンパバーンには独特の魅力がある街で、まだ滞在二日目であるが長居したい気分に駆られていくのであった。