スマート駄目リーマンの忘備録

旅行記、キャリア論、世相分析など思ったことを書き連ねます

ロシアワールドカップ観戦記(番外編)

注意点

 この章は、かなりシリアスな内容です。楽しい珍道中を期待している人は、読まないで下さい。

 

 一か月余りの休暇を満喫し、恐る恐る出社。皆はフランクに出迎えてくれた。隣の部署の課長が噂を聞きつけ、

「君、一か月もワールドカップを見に行ってたのか。うらやましい生きたかだな。」と声をかけてくれた。

 やっぱり行ってきて正解だ。会社の皆の思いを乗せて、行ってきたのだ。日本国民として大切な仕事をしたのだ。

 同じ部署の人たちにスーパーで売っていたワールドカップのキャラクターを象ったグミを配った。仕事のカバーをしてくれた同じ部署の人たちには感謝しかない。そして溜まった仕事を猛然と片付ける。

 溜まった仕事を片付けて、ヘロヘロになる。久しぶりの仕事でより一層疲労感を感じた。サッカー日本代表は決勝トーナメントに進出し、今夜はベルギーと一戦を交える。日本対ベルギー戦は終始リードしていたが、後半終了間際の怒涛のカウンターで、逆転を許してしまう。

 しかしながら、現地で生観戦していたあの興奮が蘇り、心がヒートアップした。そうだ。三位決定戦のチケットが無いか調べて、またロシアへ見に行こう。

 急いでFIFAのサイトを調べると三位決定戦に空席があった。後先考えずに予約し、急いで航空券も予約した。e dreamという代理店で、あまり評判が良くないが、安かったのでそこにした。ホテルもExpediaで適当に安いところを予約した。

 翌日、恐る恐る課長に再度の休暇を申し出た。答えはNG。今度休んだら、クビにするとのことだ。残念、無念。せっかくの予約が全てパーだ。労働基準法では上司は部下の有給休暇の取得禁止は出来ず、仕事が差し迫ったやむを得ない事情で、時期を変更する事しか行えないはずだ。法律的に対等に争うことも出来る。しかし、ここで争ったら逆効果だ。やっぱりここは日本なのだ。同調圧力には、これ以上抗えない。

 帰宅して、泣く泣くホテルのキャンセルをした。茫然自失となり、試合のチケットはキャンセルできたのか記憶にない。e dreamという格安航空券の代理店にも電話してキャンセル手続きをした。電話口には中国人と思しき女性が、たどたどしい日本語で回答してくれた。正直、こちらの意図が伝わっているのか微妙だった。ネットでの評判の悪さというのはどうやらこういったところにあるかもしれない。キャンセル料が半分くらい取られたと思うが、無事にキャンセル出来た。

 

 仕事を怠けたいんじゃない。ただ、夢の続きが見たかったんだ。

 

 日本はベルギーに負けた。そして、私は普通に会社に通い、代わり映えしない色褪せた日常がまた始まった。

 タイトな開発スケジュールが襲い掛かってくる。海外営業部から降ってきた無茶苦茶な開発納期に本当に怒りがこみ上げた。納期を調整するとは口だけ。電話を一本かけて、相手に押されるとあっさりと引き下がってしまった。そしてそのしわ寄せは設計部に。また慢性的な残業が襲ってくる。

 夕食は会社のビルの地下のイカリスーパーで弁当を買うか、帰宅してセブンイレブン冷やし中華を食べるかだ。冷やし中華だと栄養が偏るので、その上にカット野菜と納豆をかける。

 そして疲労困憊で帰宅しても、誰もいない暗いワンルームの部屋が私を待ち受けるだけだ。暗いワンルームは寂寥感で満ちたブラックホールのようだ。毎日、口を開けて待ち構え、自分を今にも飲み込もうとしている。飲み込まれたら一生脱出できないのではないかと恐ろしくなる。(ちなみに同じ設計部で独身なのは当時私だけであった。)

 翻って、隣の部署では産休と育休で一年以上休職している女性社員がおられる。比べる次元は違うが、独身一人暮らしの中年男性にささやかな幸せや希望を分け与えてくれたっていいじゃないか。もう自分はこれから人生で大した楽しみも無く、最低限食べて行き、社会に税金を納める為だけに馬車馬のごとく働くだけだ。

 数か月後、その女性社員は二年間フルに産休と育休を取得した後、引継ぎもろくにやらずに退職していった。流石に不公平感を抑えることは出来なかった。

 

そうだ。もうこの会社を辞めよう・・・・・・。

 

 納期に間に合わせるように頑張っても、関連部署からは不平や不満しかもらわない。ありがとうの言葉をほとんど聞いたことがない。一方で女性社員には激甘。育休フェードアウトでも咎められることも無かった。

  自分は一体、何のために仕事をしているんだろう。給料が安くても、自分らしく働けるような会社を見つけて、そこで頑張ろう。